大腸疾患

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・年末年始(12/29~1/3)
面会時間 平日 14:00~16:00、
土・日・祝日 13:00~17:00

大腸疾患

大腸がんとは

大腸は消化管の最後尾にある1.5m~2mの長さの臓器で主な役割は水分を吸収して便を形成することです。大腸は結腸と直腸に分けられ、結腸は更に盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸の部位に分かれます。

大腸がんとは大腸表面の粘膜から発生する悪性腫瘍の総称です。

危険因子

大腸がんの発生に関しては環境的要因と遺伝的要因どちらも重視されていますが、環境的要因では高蛋白食、高脂肪食、低繊維食、飲酒、喫煙、運動不足などが大腸がんのリスクとして挙げられています。特に近年我が国では食事の欧米化などにより高脂肪食による胆汁酸の組成の変化などがその一因と考えられています。

疫学

国立がんセンターの統計によりますと、大腸がんに罹患する人の割合は40代から増え始め、高齢になるほど高くなります。男性が女性より罹患率、死亡率ともに2倍ほど高い特徴があります。しかし、発生部位別でみると男性では肺がん、胃がんに次ぐ3位なのに対し、女性では1位となっています。罹患率においても女性では毎年増加傾向にあります。大腸がんは日本人では直腸がん、S状結腸がんが多いとされ、次いで上行結腸がん、直腸S状部がん、横行結腸がん、盲腸がん、下行結腸がんの順になります。

大腸がんの症状

早期がんでは症状はほとんどありません。進行に伴って便に血液が混じる(血便)ようになることがあります。長年痔を患っている人でもがんができる場合があるので、痔からの出血と決めつけないことが大事です。また、排便回数の変化(便秘と下痢の繰り返し)や便が細くなったり腹痛などの症状がでることもあります。

症状だけでは確定診断は出来ませんので、気になる症状があるときはお近くの医療機関への受診をお勧めします。がん検診を毎年欠かさず受けている方でも症状を契機に大腸がんが発見されることがあります。がん検診は非常に重要な検査で、毎年欠かさず受けることをお勧めいたしますが、残念ながら検診ですべてのがんが指摘できるわけではありません。

大腸がんの検査、診断

便潜血検査

早期の大腸がんでは自覚症状はなく、ほとんど便潜血を契機に発見されます。便潜血検査(ヒトヘモグロビン法)は 便に目で見てもわからないような出血が潜んでいるか調べる検査で、これが陽性ですと大腸にがん、ポリープ、痔、憩室などの病気があり出血源となっている可能性がありますので精密検査が必要です。1回の検診ではがんが見つからないこともありますので、毎年検診を受けることをお勧めします。

注腸造影検査

肛門からバリウムと空気を注入してレントゲン撮影する検査です。大腸の壁にできた病変やがんの位置、大きさ、形などを判断するのに適しています。また腫瘍による閉塞がある場合に腫瘍より口側の病変の有無の評価に有用な検査となります。

大腸内視鏡検査

肛門から盲腸まで内視鏡(スコープ)を挿入して直接観察し、異常があれば大腸粘膜の一部をかじりとって(生検) 顕微鏡検査(病理検査)で詳しく調べます。病変部の表面を拡大してみることができ、病変が大腸粘膜の表面(粘膜内か粘膜下層の浅い部分)に留まっていれば内視鏡で切除することが可能です。

病理検査

内視鏡で採取した組織を顕微鏡で観察をします。この検査でがんかどうかの診断をつけます(確定診断)。内視鏡でがんを切除した場合は病理検査で「がんが取り切れているか」「がんの深達度(深さ)はどうか」「がんが静脈やリンパ管に浸潤していないか」「がん組織の種類」などを明らかにし、追加で外科治療が必要かどうかを判断します。

がんの広がりや転移を調べる検査

大腸がんと周囲の臓器の位置関係や、がんの広がり、リンパ節転移の有無を調べるため、CT検査やMRI検査、腹部超音波検査、PET検査などの画像検査を行います。

大腸がんの治療

がんの治療には内視鏡治療、外科治療(手術)、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療など様々な治療法があります。推奨される治療法は患者さんによって異なり、大腸がんの深さ(深達度)、転移、浸潤、腹膜播種の有無などから総合的に判断し決定します。

内視鏡的治療

最も負担が少ないのは治療です。肛門から内視鏡を入れて大腸内を観察しながら病変を切除します。出血や穿孔の可能性もあるため、短期間の入院を必要とします。切除方法は病変の大きさや形などで決定され、金属の輪(スネア)を腫瘍にかけて切除するポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡専用の電気メスを使用し腫瘍を切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などがあります。病理検査結果で、粘膜内にとどまる早期がんは治療が完了ですが、病変が深くまで広がっていれば、リンパ節転移の危険性が生じるために、外科手術が必要になってきます。

外科治療(手術)

手術の原則はがんを取り残すことなく切除することです。腫瘍のある腸管だけでなく、腸管を栄養する血管を根元(根部)で処理し、がんが広がっている可能性のある周囲のリンパネットワーク(リンパ節郭清)や組織(浸潤臓器合併切除)を一括で切除します。開腹手術と腹腔鏡手術があります。開腹手術はおなかを切開し、直視下で臓器の切除を行います。腹腔鏡手術は5~12mmの切開を複数個所おなかに入れて、そこからカメラや鉗子を挿入して手術を行い、最終的に4~7cm の小切開創で切除臓器を摘出します。どちらも保険適応の治療であり、がんの局在や進行度、周囲の臓器の状態などを総合的に判断して手術方法が決定されます。

また最近ではロボット支援下手術も直腸がんにおいて保険適応となりました。ロボット支援下手術は腹腔鏡手術と同じようにおなかに開けた穴を利用し、カメラと関節のついたロボットアームを挿入して行う手術です。腹腔鏡手術と比較してより繊細な手術が可能となると期待されています。

化学療法、放射線治療

大腸がんに対する化学療法はこの10年で急速に進歩しました。当科では分子標的薬剤を含め次々と開発された抗癌剤をいち早く治療に取り入れ、最新のガイドラインや個々の患者さんの状態・癌細胞のバイオマーカーの結果を踏まえた方針で治療を行っています。また従来入院が必要であった抗癌剤治療も外来化学療法室で行い、患者さんの生活へ負担の少ない治療を心掛けています。

近年では全国規模の国内の臨床試験や治験など、適格基準を満たす患者様に参加をお願いして将来の大腸がん集約的治療確立のためにご協力をいただいております。化学療法に加え、局所の進行を抑える目的や、疼痛コントロールの目的で放射線治療が併用されることもあります。化学療法や放射線療法で病勢が制御され、切除可能と判断された場合は積極的に外科手術を行っております。(コンバージョン手術)大腸がんはこのような化学療法や放射線治療で病勢制御をおこない切除が可能な場合は長期の生存が望める場合があると報告されており、当院では再発や遠隔転移を並存あるいは発症した場合でも治癒を目指して治療を行ってまいります。

また標準治療で効果が認められない場合は個々の患者様(個別化治療)のがんの遺伝子検査を網羅的に行い(がん遺伝子パネル検査)結果に基づいて治療薬の検索や参加可能な国内臨床試験の検索を行っております。(保険適応外)

大腸がんの手術実績(過去10年間)

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
結腸がん 103 115 106 106 107 126 115 138 144 125 130
直腸がん 60 80 72 78 73 65 89 68 97 71 90
うち腹腔鏡手術 41 73 83 102 128 125 136 165 186 164 109